想い出に出来なくて(キャンパス・ライフ番外篇 切なく青い空のページ)
正直な話、こんな文章を書くために筆を執るのはいささか苦痛である。しかし、このまま記憶の片隅にうずめてしまうには余りにも大きく、重たいことであるのもまた事実だ。振り切らなければならないことと、忘れてはならないことの区別はいまだに難しいが、あの夏の終わりに起きたことを出来るだけ正確に記そうと心がけた。
(平成11年8月)
正直な話、こんな文章を書くために筆を執るのはいささか苦痛である。しかし、このまま記憶の片隅にうずめてしまうには余りにも大きく、重たいことであるのもまた事実だ。振り切らなければならないことと、忘れてはならないことの区別はいまだに難しいが、あの夏の終わりに起きたことを出来るだけ正確に記そうと心がけた。
(平成11年8月)
第0話:9月9日 「この年でもうひとつ忘れられないのは、誰もがいつかは経験するように身近に死を経験したということです。それまで私にとって死は観念的なもので、新聞で読む数行であらわされるものでしかありませんでした。」 アラ…
第1話:あの日あの場所で 「人の運命を決めるものが何かはしょせん不可知だが、思い返してみると誰にとってもその人生を左右したような分岐点が幾つかはあるものだ。ある場合それは愛した相手だったり、選んだ友人であったり、あるいは…
第2話:春 「人間の真価というのはわからないんだよ、なかなか。土壇場になると思いがけないその人の性格が出てくる。土壇場にならないと、わからない。いざというときになってはじめてわかるものだ、人間の真価というのは。」 池波正…
第3話:優しい木曜日 「若かったらそれだけで文句を言う人は多い。それはかなりきつい事だと思うよ。」 ミカ・ハッキネン(フィンランド人) とりあえずはバイトが続けられて嬉しい僕ではあったが、ふと我に返ってみると、背負わされ…
第4話:あくびの午後 「私は、親が子に『~をしちゃいけない』とか『~を守らねばならない』とかいうことが必要だと思うのは、そういう否定を通じて『個』というものが現れてくるからです。」 福田和也(文芸評論家) 世間から見れば…
第5話:もう一度 「いろんな意見がある中では、最後に決定する人を決めておかないと組織は動かない。学校では校長であり、それに従うのが民主主義だ。」 町村信孝(文部大臣) R放送の人事異動は、主として1月、4月、そして7月に…
第6話:とても長い夜 「死ぬのが怖いとか怖くないなんて、誰も普段はそんなこと考えて生活してないよね。人間、生きているってことは、いつでも死ぬ可能性を抱えているってことでしょ? 風呂場で転んで死ぬことだって、食中毒でだって…
第7話:なぜ… 「人は必ず死ぬという事実を突き付けられ、僕はそれを受け入れることが出来ていなかったんです。目の前で人が死ぬことを受け入れられない未成熟な人間では、ジャーナリストを続けることは出来ないだろうと自分に問いまし…
第8話:雨 「悲しいと思った記憶はない。かわいそうにとも思えなかった。ただ私の胸の中を『なんなんだこれは……一体なんなんだよ、これは……!』という怒りにも似た感情が幾重にも重なり合ってゆくのを憶えた。」 角田四郎(作家)…
第9話:祭りのあと 「人生は短く、人はみな遠からず死ぬ。これは真実だよね。」 スティーブ・ジョブス(アメリカ人) 怒濤の1週間が過ぎ、ワイドショー番組のけたたましい報道も収まりつつあった。 葬儀は終わったが、もちろん事件…
エピローグ:この星空の彼方 そこで私は、アイルトン・セナの死の現実に直面した。真の真実。それは、無名のファンが、照明用高圧線の鉄塔に書き残したものだった。 アイルトン、君のミスで死ぬことなどあり得なかった!」 『複合事故…