エピローグ:この星空の彼方

そこで私は、アイルトン・セナの死の現実に直面した。真の真実。それは、無名のファンが、照明用高圧線の鉄塔に書き残したものだった。
アイルトン、君のミスで死ぬことなどあり得なかった!

『複合事故』(フランコ・パナリッティ 著 長谷川信幸 訳)


このエッセイでは、平成8年に東京・葛飾区で起きた女子学生殺人放火事件と僕との関わりを描いた。本来、この内容は『さよならの挨拶を』で述べるつもりだったのだが、当時はどうしても筆を進める気にならず、第10話は欠番とした。

掲載後「どうして第10話がないのか」、あるいは「何にさよならの挨拶をしたのか分からない」という問い合わせや批判が相次いだが、それに対する答えにはなったと思う。

当時のことを思い出す人は確実に少なくなっているだろう。事件の風化は避けられまい。しかし、決して忘れてならないのは、彼女を殺めた人間が確実に存在し、なおかつ未だ逮捕されることなく今日に至っているという現実である。残された家族の心境は察するに余りあるし、警察関係者には一刻も早く犯人を検挙していただきたいと願わずにはいられない。

執筆に際しては、誰にも事前の挨拶をしなかった。無礼は承知していたが、この件に関しては、自分の思うところだけを書きたかったし、外的要因によって筆を抑えたり、自分の意思を曲げることをよしとしなかった。ご海容いただければ幸いである。